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安心して過ごせる居場所「ふぁーすと」の紹介

「ふぁーすと」の紹介

 
■ 不登校ってどんなこと?
 ふぁーすとスタッフ 美川寛
 (スクールカウンセラー)

 私が不登校の子どもさんに初めて会ったのは、約40年前でした。当時勤めていた児童相談所に、ある親御さんから「子どもが学校に行かなくて困っている。」と電話が入り、職員2人で家庭訪問しました。その子どもさんは小学校高学年で、嫌がるのを無理やりに親御さんと一緒になって学校へ連れて行きました。その子どもの悲しそうな泣き顔を今でもよく覚えています。その頃は、学校に行くのは当たり前、何が何でも学校復帰させることが一番良いことだと考えられていましたので、子どもの気持ちはあまり考慮せずに、強制的に登校させたり児童相談所の一時保護を利用したり、時には児童福祉施設に入所させたりして、学校に通わせることを一生懸命にしていました。学校に通えるようになった子どもの親御さんからは感謝されましたが、子どもの気持ちを考えると本当にこれでよかったのかと悩むこともありました。当時はそのような対応で精一杯でした。

 学校へ通えなくなった子どもには、様々なタイプがあります。不登校になった原因(きっかけ)はそれぞれ違い、不登校の様子も各人各様です。対応も一様ではありません。子どもにもよりますが、小学校低学年の場合は、強く押し出すとうまくいくこともあります。低学年では不登校が固まっていないからです。しかし、小学校高学年や中学生になると、いじめや対人関係に悩んだり勉強につまずいたり、また、部活動で疲れ切って学校へ行けない子どももいます。原因が全く解らないこともよくあります。鳥取大学小枝達也教授の調査では、不登校の約4割の子どもに、いわゆる軽度発達障害の子どもがいるという調査結果もあります。軽度発達障害は、最近よく耳にするようになりましたが、注意欠陥多動性障害(ADHD)とか学習障害(LD)とかアスペルガー症候群などです。これらは親のしつけが悪かったわけではなく、中枢神経系に何らかの機能障害があると考えられています。そういう子どもも学校で不適応を起こして不登校になっているというのです。このような場合には、医者と相談しながら指導していく必要性があります。このように、不登校になる要因は様々ですが、共通して言えることは、親御さんの悩みはとても深刻だということです。そして、一番悩み苦しんでいるのは本人です。最近は、悩んでいない不登校児もいると言われていますが、これは少数だと思います。また、自分のせいで子どもが学校に来ることができなくなったのでは、と悩んでいる当該学級の担任の先生もおられます。

 1992年に文部省(現文部科学省)は、不登校は誰にでも起こりうると言っています。しかし、未だに周囲の人たちの不登校児への無理解があり、本人や家族を傷つけていると思います。不登校児と話していると、「自分はダメな人間だ」「社会からの落伍者だ」と言う子どもがいます。私は、不登校児は例外なく「自己肯定感」が非常に少ないなと感じています。

 昨年度から私は、不登校児の親の会「実樹の会」に毎月出席しています。そこには、不登校を乗り越えた親子、現在悩みの渦中にある親御さんなどが参加されています。向き合う課題は多様ですが、会を主宰している日高正智氏(元高校教師・ふぁーすとスタッフ)がアドバイスをし、親御さん同士が「たとえ不登校になっても立派に生きていけるのだ」と励まし合っています。この会で私は、親や子どもたちが生きる力を与えられている場面に何度か遭遇しました。

 私は、不登校の子どもは時間がかかっても「信じて待つ」姿勢が非常に重要だと思うようになりました。しかし、目の前に学校へ行かない子どもがいると、親は不安になったり焦ったり、非常に辛い時があります。それを乗り越えるためには、親子がカウンセリングを受けるとか、「実樹の会」のような親同士の自助グループへの参加がとても有効だと考えています。

 最後に、子どもたちへ送りたいメッセージを。月並みですが、「なにかやりたいことを見つけてほしい、『夢』をもってほしい」と思います。このことは不登校の子どもだけでなく、私が会う子どもたちにいつも話しています。なぜなら、「夢」には私たちを動かすエネルギーがあるからです。
ふぁーすと(三刀屋アスパル横)
月~水曜日(祝日を除く) / 午前9時~午後4時 / TEL 0854-45-5176
【問】教育委員会学校教育課 0854-40-1072
 

 
 

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